つぶやき その15

私たちが考える「訪問看護師が安心して活用できるAI支援システム」って、どんなものだろう。

研究を進めながら、最近よく考えています。

訪問看護では、看護師が一人で利用者さんのお宅を訪問し、その場で状態をみて、話を聞いて、いつもとの違いを感じ取りながら判断しています。「このまま様子をみていいのか」「主治医に連絡したほうがいいのか」「もう少し確認しておくことはないか」。病院のように、すぐ隣に相談できる人がいるとは限りません。

そんなとき、AIが答えを出してくれればいいのかというと、私たちは少し違うと考えています。

AIに「こうしてください」と指示されるのではなく、「この情報も確認してみては?」「前回と比べてここが変わっています」と、看護師が考えるための材料をそっと出してくれる。迷ったときには経験豊富な看護師や他職種につながることができる。訪問が終わったあとには、その日の判断を振り返ることもできる。

そんな使い方ができたらいいなと思っています。

訪問看護師が持っている、利用者さんのちょっとした表情の変化への気づきや、「今日は何となくいつもと違う」という感覚までAIに置き換える必要はありません。むしろ、そうした看護師の気づきを起点に、必要な情報を整理したり、判断を支えたりするところにAIを使いたい。

もう一つ気になっているのは、AIを使うことで仕事が増えてしまわないことです。新しいシステムを導入したのに、入力項目が増え、記録にも時間がかかる。それでは現場ではなかなか使ってもらえません。できるだけ普段の訪問看護の流れを変えずに、必要なときに必要な支援が入る仕組みにしたいと思っています。

これまで取り組んできたNPENでは、訪問看護師のアセスメントを遠隔から支援する仕組みを考えてきました。次の研究では、そこを土台にしながら、アセスメントだけではなく、日々の看護実践や記録、情報共有、学習なども含めて、訪問看護をもう少し広く支える仕組みを考えていきます。

研究テーマは「訪問看護を包括的に支えるオールインクルーシブ型AI支援システムの開発」。

「オールインクルーシブ」と言うと少し大きなテーマに聞こえますが、まずは訪問看護師さんが現場で「これなら使いたい」と思えるものは何なのか、そこから考えていきたいと思っています。

つぶやき その14

遠隔支援と人材育成を一つの仕組みに

NPENのもう一つの特徴は、実際の訪問看護を支援するだけでなく、訪問看護師の教育にもつなげようとしている点です。

訪問看護の現場では、一人で利用者宅を訪問することが多いため、病棟のように先輩看護師の判断過程をそばで見たり、その場ですぐに相談したりする機会が限られています。経験を積むことはもちろん重要ですが、経験しただけで臨床判断力が身につくとは限りません。

「なぜその情報が必要なのか」「なぜそのように判断したのか」を振り返り、経験と知識を結びつけることが必要です。

NPENでは、遠隔支援の中で交わされた観察や判断のプロセスを、訪問後の振り返りや学習にも活用できる仕組みを検討しています。実践中の支援と実践後の学習を分断せず、日々の訪問そのものを学習機会にしていくことが狙いです。

つぶやき その13

地域で働く看護師が、一人で判断を抱え込まないために

在宅医療のニーズが高まる中、訪問看護師に求められる判断は複雑になっています。一方で、すべての訪問看護ステーションに経験豊富な看護師を十分に配置できるわけではなく、地域によって人材や教育環境にも差があります。

NPENによって、所属する事業所や地域にかかわらず、必要なときに専門的な支援へアクセスできる環境をつくることができれば、経験の浅い訪問看護師にとって大きな支えになります。

また、経験豊富な看護師がどこを見て、何を根拠に判断しているのかを共有できれば、その知識や経験を次の世代の訪問看護師へ伝えることにもつながります。

現在は、訪問看護の現場で本当に必要とされる機能は何か、遠隔支援者と訪問看護師をどのようにつなぐのがよいのか、AIをどこまで活用するのが適切なのかなど、実装に向けた検討を進めています。

NPENは、看護師に代わって判断するためのシステムではありません。

利用者のそばにいる看護師が、自分で観察し、考え、判断する。そのときに「一人ではない」と思える環境を、ICTとAIを使ってどうつくるか。現場の看護師の声を聞きながら、実際に使える仕組みにしていきたいと考えています。

つぶやき その12

AIをどのように活用するか

今後のシステム構築では、AIの活用も重要な検討課題です。

AIに看護師の判断を任せるのではなく、看護師がより適切に考えるための「支援」として活用することを想定しています。入力された情報を整理したり、確認が必要な観察項目を提示したり、過去の情報との変化を見つけやすくしたりすることで、看護師のアセスメントを補助することが考えられます。

一方で、在宅療養者の状態は数値だけでは捉えられません。「いつもより口数が少ない」「今日は横になっている時間が長い」「家族の様子がいつもと違う」といった情報も、訪問看護では重要な手がかりになります。

AIが扱える情報と、看護師がその場で感じ取り、利用者との関係の中で意味づける情報をどのように組み合わせるか。ここはNPENを構築していくうえで、丁寧に検討していかなければならない部分です。

つぶやき その11

訪問看護では、看護師が利用者の自宅を訪問し、その場で状態を把握しながら必要なケアを考えます。病院とは異なり、すぐ近くに医師や経験豊富な看護師がいるとは限りません。限られた情報の中で、「この変化は経過をみてよいのか」「主治医への報告が必要なのか」「すぐに対応すべき状態なのか」と判断しなければならない場面も少なくありません。

特に、訪問看護の経験が浅い看護師にとって、利用者の状態を的確に捉え、得られた情報を統合して判断することは簡単ではありません。バイタルサインの数値だけでなく、表情や会話、食事や排泄の状況、普段との違い、家族から得られる情報など、生活の中にあるさまざまな情報を組み合わせて考える必要があるからです。

そこで現在、私たちは訪問看護師のアセスメントを遠隔から支援するプラットフォーム「NPEN」のシステム構築に取り組んでいます。

NPENが目指しているもの

NPENは、訪問先にいる看護師と、離れた場所にいる経験豊富な看護師等をICTでつなぎ、利用者の状態を一緒に確認しながらアセスメントを支援する仕組みです。

ここで重視しているのは、単に「答えを教える」システムにしないことです。

訪問先の看護師が「何を観察したのか」「そこから何を考えたのか」「どの情報が不足しているのか」を整理し、遠隔支援者とのやり取りを通して自分の判断を深めていく。そのプロセスそのものを支援することを考えています。

たとえば、「いつもより呼吸が少し速い」という情報があった場合、それだけで判断するのではなく、SpO₂、呼吸音、体温、意識状態、活動時の変化、既往歴、普段の状態との違いなど、次に確認すべき情報があります。遠隔支援者が問いかけながら、訪問看護師自身が必要な観察に気づき、情報を集め、判断につなげられる仕組みを目指しています。

つぶやき その7

2024年8月

「訪問看護師のアセスメントを支援する遠隔支援プラットフォームNPENシステムの構築」に関する調査を開始しています。

訪問看護師さんを対象に、遠隔支援プラットフォームN to P with EN(以下NPEN)システムを構築のための第一次調査(訪問看護師が療養者のご自宅で必要と考える情報とアプリケーション)を実施ました。

研究目的は、訪問看護師が考える遠隔支援プラットフォームに搭載する機能(訪問看護において必要とする循環器疾患のある療養者の過去の情報やNPENに搭載したらよい思うアプリケーション)を明らかにするです。

結果ついては現在まとめているところです。

つぶやき その6

2023年7月にカナダ(モントリオール)でICN2023に参加してきました。

そこでは、訪問看護師さんを支援する「AIによるフィジカルアセスメントトレーナーPhysical Glassesの開発」について報告してきました。

詳細は情報発信でご確認ください

つぶやき その5

6月末に北海道札幌へ飛びました。

10月9日〜10日に開催される日本看護技術学会第19回学術集会のキーセッションの撮影のためにです。このキーセッションのテーマは「看取りの美学」で、札幌麻酔クリニックの副院長の金谷潤子先生の講演です。

 在宅医の金谷潤子先生の語る「看取りの美学」を縦糸とするならば、長年にわたり、ケアマネージャーおよび訪問看護師として多くの経験を持つ佐々木詩子先生の語りは横糸であったと思う。在宅医と訪問看護師がそれぞれの立場で、また異なる土地でのケアの語りではあるが、美しい織物を紡ぐような対談であったと感じた。金谷潤子先生の語りの中には、医療の対象者を「疾患を持つ人」として捉えるのではなく、「生活者」として捉え、日常生活の中で在宅医療が行われるという考え方が述べられ、それはまさしく、これからの看護教育が目指す「地域・在宅看護」の対象者の捉え方と共通するものであった。この内容は、金谷先生が、話題の提供をしているという「はっぴーえんど」(魚戸おさむ)の内容とも重なる。そもそも「人の死」というものの捉え方が自然なのである。「ゆっくり枯れていくように」死を迎え、下顎呼吸を、「産まれてくるとき産道を無我夢中で通り、この世に生まれてくる」ことと同じように、「あの世で生まれるために無我夢中で息継ぎをしている状態」と表現している。「死は特別なものではない、いつも日常にある、尊い区切りである」とFacebookで述べられていた。金谷先生の死生観の表現かもしれない。「誰も経験したことのないあの世」ではあるが、この表現に私自身を含め多くの人は救われ、納得するのではないかと感じた。

 また、「聴覚」についての話題も印象的である。療養者さんは最期の瞬間まで「聴覚」が機能していることや、生活の中で発生する音は、決して療養者にとって耳障りなものではなく、家族の話し声、テレビの音、洗い物をする音、足音、そして時には子どもの泣き声さえも、「生」を無意識に感じることができる心地良い音であるということが、金谷先生と佐々木先生から語られた。時には、具体的な療養者さんの言葉などを交えながら、あっという間の60分間であった。

 二人の語りは心地よく、語りを通して調和が創り出された時間であった。できればもう少しその場で調和された時間を過ごしたいと強く感じた。  後日談として、札幌から暑い暑い名古屋に戻り、コロナウィルス のワクチン2回目を摂取した私は、高熱に苦しんでいました。その時に、金谷先生から紹介されて、「はっぴーえんど」の作者である魚戸おさむ先生とお友達になることができました。とても気さくな先生で、どんどんPRに使ってもらって良いですよと、許可をいただきました。

はっぴーえんど ー新型コロナ編ー

日本看護技術学会第19回学術集会 交流セッションのご案内

日本看護技術学会第19回学術集会において、開発中のphysical glassesについて下記のような交流セッションを行います。

実際に開発されたものを公開して、皆様と意見交換をしたいと考えています。

 交流セッションテーマ:地域在宅看護を支援するphysical glasses の開発

我が国の超高齢化は類をみないほど著しく、2025年問題が示すように今後も高齢者は増加します。厚生労働省は、高齢者の尊厳保持と自立生活支援の目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生最期まで続けることが可能な包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)構築を推進しています。訪問看護アクションプラン2025では、2025年にむけ訪問看護の量的拡大、機能拡大、質の向上および地域包括ケアへの対応を掲げています。重症化・多様化・複雑化した在宅療養者の看護には、適切な状態把握と判断が必須であり、高度なフィジカルアセスメント能力が求められると考えます。高度なフィジカルアセスメント能力の獲得こそ、訪問看護の機能拡大、質の向上、地域包括ケアへの対応を可能とすると考えています。

そこで、私たちは「AIによるフィジカルアセスメントトレーナーPhysical Glassesの開発」を試みました。いくつかの訪問看護ステーションで試行を繰り返しています。交流セッションにおいては、Physical Glassesを紹介しつつ、看護において「人間にしかできないこと」と「 (AIなどを活用しながら)  人間以外でできること」を主に意見交換をしたいと考えております。ぜひたくさんの皆様のご参加をお待ちしております。

つぶやき その4

あっという間に2月です。2月14日はバレンタインデーでしたが、看護学生さんにとっては大切な第110回看護師国家試験でした。前夜には東北から広い範囲での地震もあり、COVID-19対策を強いられた状況に、一部の学生にとっては地震という大変な状況においての試験になってしまいました。多くの看護学生さんが、実力を発揮できたことを祈るばかりです。

 さて、2月に研究代表者の篠崎惠美子とメンバーの藤井徹也が執筆した「事例から学ぶ 地域・在宅看護論~訪問時のお作法から実習のポイントまで~」が医学書院から出版されました。看護学生を対象にしたものですが、訪問看護師さんにも読んでいただける内容にしたつもりです。ご一読いただき、感想などのコメントをいただけたら嬉しいです。

事例から学ぶ 地域・在宅看護論~訪問時のお作法から実習のポイントまで~