つぶやき その2

 皆さんは聴診器を使いこなせていますか?

 ウィリアム・オスラーは「あなたが観察し学ばなければならないことは、自分の目で見聞き、そして心で感じること」と述べています。

 訪問看護の現場で、医療機器を使うことは困難です。しかし、フィジカルイグザミネーションは、簡単な道具でいつでもどこでも情報収集が可能となります。中でも聴診器は多くの看護師が必ず使用している道具ではないでしょうか。

今回は、その聴診器について、つぶやきです。

 紀元前380年、ヒポクラテスは、患者の胸に直接耳をあて、体の音を聞き、健康かどうかを判断したと言われています。「人の健康状態によって身体の中の音に少し違いがある」ということに気がついていたのです。その後長い期間、医師は患者の胸に耳を当てて、情報を集めいていました。19世紀に入り、ルネ・ラエンネックは女性患者が、医師が胸に耳を当てることを恥ずかしく思っていることを知り、聴診器の原型となるものを開発しました。これが、聴診器の始まりです。紀元前から19世紀までの長い時間、聴診器がなく、直接胸に耳を当てていたという事実を知り、今の時代に生まれてよかったと考えるのは私だけでしょうか。最初の聴診器は、筒状の簡単な仕様でした。日本には1848年にオットー・モーニッケ(出島商館医・自然科学調査官)が、オランダ通詞の吉雄圭斎に与えたものが日本初の聴診器だといわれています。1851年には現在の聴診器と近い形のY型チューブの両耳型聴診器が発明されました。現在では、録音機能を備えた電子聴診器などもあり、進化しています。私が臨床で看護師をしていた頃は、よく医師に、「聴診器はアクセサリーではない!ちゃんと使いこなしなさい」と言われたものです。訪問看護において、聴診器を療養者さんに使うだけでも、安心される場合もあるようです。聴診器を使いこなすことで、より良い情報を収集することができます。是非とも使いこなしたいものですね。