研究の紹介
2022年」に私たちの研究テーマ「AIによるフィジカルアセスメントトレーナーPhysical Glassesの開発」を完了しました。
2023年からは、「訪問看護師のアセスメントを支援する遠隔支援プラットフォームNPENシステムの構築」をテーマに研究を継続します。
我が国の超高齢化は類をみないほど著しく、2025年問題が示すように今後も高齢者は増加します。「終末期医療に関する調査」(厚生労働省)では、死期が迫っていても可能な限り自宅で暮らしたいと希望する人が多い結果が示されました。今後看護・介護を受けながら自宅で暮らし続ける高齢者が増加する、つまり在宅療養者は急増し、重症化・多様化・複雑化していくことが予測されます。厚生労働省は、高齢者の尊厳保持と自立生活支援の目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生最期まで続けることが可能な包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)構築を推進しています。訪問看護アクションプラン2025では、2025年にむけ訪問看護の量的拡大、機能拡大、質の向上および地域包括ケアへの対応を掲げています。重症化・多様化・複雑化した在宅療養者の看護には、適切な状態把握と判断が必須であり、高度なフィジカルアセスメント能力が求められると考えます。高度なフィジカルアセスメント能力の獲得こそ、訪問看護の機能拡大、質の向上、地域包括ケアへの対応を可能とすると考えています。
このような看護を取り巻く社会の状況では、人工知能Artificial Intelligence(以下AI)の発達は著しく普及も進んでいます。2045年にはAIが知識・知能の点で人間を超越し、科学技術の進歩を担い世界を変革する技術的特異点(シンギュラリティ)が訪れる」とも言われ、手術支援ロボット「ダビンチ」や画像診断などAIの進歩は医療にも影響を及ぼしています。現時点では医療において研究・開発は進んでいますが、看護に関してはまだAIを活用した研究・開発の報告は多いとはいえません。
篠崎らは「臨床と教育の両者が求めるフィジカルアセスメント教育のミニマム・エッセンシャルズ」(基盤研究C,2007-2008)にて,基礎教育における最低限必要なフィジカルアセスメントの教育内容を明らかにしました。2010-2012年「臨床看護師のフィジカルアセスメントスキルを向上させるバーチャル教材のシステム開発」(基盤研究C),2013-2015年「インタラクティブボディガイドを活用したフィジカルアセスメント学習システムの開発」(基盤研究C),「特定看護師へのクラウド型Advanced フィジカルアセスメント教育ツールの開発」(基盤研究C,代表藤井徹也,2012-2014)など教育内容や方法などの研究を実施してきました。これらの研究実施や訪問看護師対象のフィジカルアセスメント教育を実施するうち,高度なフィジカルアセスメント能力を必要とする訪問看護師へはさらに何等かの教育的介入が必要と考え、2016-2019年に「山村部で活躍する訪問看護師のアセスメント能力向上のための遠隔システムの構築」(基盤研究C)を実施してきました。訪問看護師への教育介入を実施するうちに、AIを活用した高度なフィジカルアセスメントをサポートするツールが有効ではないかと考えました。その理由として、①訪問看護の対象である在宅療養者が重症化・多様化・複雑化しているため、フィジカルアセスメント能力向上のためには、基礎的なフィジカルアセスメント教育だけではなく、教育と同時に多様な状態・状況のアセスメントをサポートしなくてはフィジカルアセスメント能力の向上は困難であること、② 現在 AIに関しては第三世代と言われ、「知識処理(実行)の自動化・自立化」のAI活用実績が報告されていることがあります。これらのことより、AIと看護学を融合させ、基礎教育&在宅で活用することができるAIによるフィジカルアセスメントトレーナー“Physical Glasses”の開発を行うことを目指して研究をしました。その結果、Physical Glasses”の開発をすることができました。そして、次のステップとして、「訪問看護師のアセスメントを支援する遠隔支援プラットフォームNPENシステムの構築」をテーマに研究を継続します。